“釣り人の楽園” あわかんに学ぶ、体験価値のマーケティング

みなさんは、淡路島観光ホテルをご存じでしょうか?
最近リブランディングを行い、現在は「あわかん」という愛称で知られています。
釣りをする方の間では「釣り人の楽園」と呼ばれる、ちょっと特別なホテルです。

このホテルの最大の特徴は、24時間釣りができるということ。レンタル釣具やエサも使い放題と、釣り好きにはたまらない環境が整っています。それだけでなく、釣りをしたことがない人でも楽しめるように、体験コンテンツやサポートが細やかに工夫されていました。

なかでも驚いたのは、釣った魚を調理してくれるサービス。なんと、10匹まで一律500円でお造り・唐揚げ・煮付けなど、自分の好みに合わせて料理方法を指定できるのです。

私も子どもと釣りに行くことがありますが、帰ってから魚をさばいて、片付けて、お風呂に入って……というのは正直かなりの重労働です。それが「あわかん」では、釣りを終えてお風呂に入って出てくると、
自分が釣った魚が見事な料理になって食卓に並んでいる。これはもう、釣り人にとって夢のような体験です。

もともと業績不振だったホテルが、自然資源を活かして釣り体験という“体験価値”を商品化し、見事に再生を遂げたのがこの「あわかん」です。

実際に訪れてみると、サービスの細部にまで“釣り人目線”が行き届いていました。自分なら調理をためらうような小さな豆アジでさえ、丁寧に小骨を取り除いてお造りに仕上げられ、皿には「私が釣りました」の旗まで。たった500円とは思えない手間のかけ方です。

ホテル側の運営だけを考えるなら、「調理方法は唐揚げのみ」「調理は〇cm以上の魚に限る」といったルールを設けることもできたはず。しかし、あわかんはそうしませんでした。お客様が“自分で釣った魚を一番おいしく味わう”という体験を何よりも大切にしているのです。

こうした「体験価値 × 食体験(胃袋マーケティング)」の組み合わせは、まさに最強のマーケティング手法だと感じました。顧客の五感に訴え、感情を動かし、記憶に残る体験を設計する。これは単なる観光サービスにとどまらず、“顧客が自ら語りたくなる体験”をつくる好例といえるでしょう。

返信を残す