“日本語がない朝食”が教えてくれたインバウンドの波

大阪出張の際、延泊した翌朝に万博前の市街地を少し歩いてみました。朝から街を歩くとまず目につくのは、外国人観光客の多さ。そして、それに応じるように、インバウンド向けのホテルや飲食店が急増していることに驚かされました。

昨年も道頓堀を歩いた際、あまりの外国語の多さに「ここは本当に日本か?」と思いましたが、
今回はさらに外国人対応が進んでおり、ホテルの1Fに併設されていたカフェでは日本語メニューが完全に消えていたのです。

何気なく日本語で話しかけたところ、スタッフの方が少し驚いたように「日本の方ですか!?」と。
まるで海外の日本食レストランに入ったような体験でした。

写真のメニューを見ても、表記はすべて英語。どうやら、宿泊客はほとんど外国の方のようです。
メニュー名は和定食ではなく、「Traditional Japanese Set」。外国人にも直感的にわかる言葉が選ばれています。別のポップにあったこのメッセージでは、
“You can take them out and eat them in your room!”
(おにぎりをお部屋に持ち帰って食べても大丈夫です、という意味です)

日本人では当然に思えることでも、外国人旅行者の「部屋で食べていいの?」という小さな不安をこの掲示で解消しています。つまり、単なるテイクアウト案内ではなく、顧客の不安を先回りして解消するマーケティング設計の例なのだと感じました。

これまで「外国語対応=翻訳」だった時代から、「顧客体験を最適化するコミュニケーション」へと進化している。万博を控えた大阪は、まさにそのマーケティング実験の最前線でした。

私たちは、こうした“現場での違和感や発見”から多くを学ぶことができます。ただ街を歩くだけでも、言葉の選び方や、掲示物の伝え方、接客のスタイルの中にマーケティングのヒントが無数に隠れています。

現場で自分が体験することに意識を向けること。それこそが、次なるマーケティングのヒントを見つける一番の近道なのだと思います。

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